ボリウッド映画鑑賞記
Vol.34

Lagaan  ★★★★★

監督:Ashutosh Govariker

音楽:A.R.ラフマーン

出演: Bhuvan   Aamir Khan
     Gowri   Gracy Singh
     Goliath  Paul Blackthorne
       (イギリス人の地方官吏官)
     Elizabeth  Rachel Shelley
       (Goliathの妹)
ナレーション:アミターヴ・バチャン

鑑賞記

もう、久しぶりの大興奮です。ヒンディー映画界の 3大カーン・スター、アーミル・カーンの主演・プロデュースで、公開前から大評判。前売りチケットは発売3時間で売りきれ、過去最高数の映画館上映。(ボンベイだけでもで21館上映)

いつものマサラムービーのように海外ロケなし、英語もほとんど話さない農民の映画。アミール以外は、ほとんど知られていない俳優たちだし、重要な役どころにイギリス人を起用。なぜ、こんなに評判なのか?

観ればわかる。最高の出来。インド人が大好きなクリケットの試合がふんだんに出てくるし、統一性のない多種多様のインド人が打倒イギリスで、一致団結。観終わったら、誰もが爽快な気分になってしまう。

「勝利への脱出」(Escape to Victory、1981)と、「アンナと王様」(2000)を混ぜた感じ。もっと言えば、「7人の侍」と、「瀬戸内少年野球団」も入ってる。これは、きっと「ショーレ」や「DDLJ」を抜くロングランになるに違いない!今年一番の大金星!

場内は、バッターボックスに立つバッターを、息をのみ、身を乗り出して応援する観客で大興奮。試合が最高潮に達するあたりからは、1球ごとに、大きなため息と、興奮。はぁー、3時間42分はあっという間でした。クリケットのルール知らない人でも大丈夫。農民たちと一緒に、学びながら観戦できちゃいます。ロケ地は、西部大地震の震源地ブジ。全撮影が、終了した直後の大地震で、セットは、あっという間に、壊れてしまったそうです。アーミル・カーンもかなりショックだったとか。

あらすじ

1893年、グジャラートの農村。今日も村人たちは、天をお仰ぎ、恵みの雨を待つ。村外れのブッシュでは、この地方を納めるイギリス官吏が、鹿狩りをしている。村の青年Bhuvanは、茂みの蔭から小石を投げて、鹿に警告するところを、イギリス人たちに見つかってしまう。このことで、Bhuvanは、地方官吏Goliathの反感を買う事になる。

雨が降らず、今年の収穫も思わしくなさそうだ。それなのに、地主はイギリス人支配下のもと、重税を言い渡してきた。地主の家に赴き、減税を懇願する百姓たち。そこでは、今日もイギリス人たちがクリケットに興じている。

Bhuvanを百姓たちの中に見出したGolitathは、「減税に応じてやっても良いぞ、しかし条件は、クリケットで俺たちに勝ったらだ。もしも負けたら、税は3倍にするぞ。」うなだれる農民たちの中で、顔を上げて、この勝負を受けると言い放つBhuvan。動揺する百姓たち。

村では、誰もがBhuvanに対して非難的だ。1人で木を削り、バットを作るBhuvanに最初に興味を示したのは、少年たちだ。思いきりバットを振るとお寺の鐘を直撃して、村中に響き渡る。一人、二人とチームに加わり始める…。

しかし、クリケットってどうやるの?こっそり、茂みに隠れてイギリス人のゲームを偵察に行くBhuvanたち。それを見つけたは地方官吏Goliathの好奇心旺盛な妹Elizabethだった。「ルールを知りたいの?私が教えるわ…」とElizabethでも、「俺たちに?なぜ、俺たちを手伝うんだ?」とBhuvan。「だって、フェアーじゃないわ、スポーツはフェアーでなくては。あなたたちにとっても」

それからは、こっそりと、村はづれの広場で練習が始まる。Elizabethも少しづつ村の言葉がわかるようになる。Bhuvanを慕う、村娘Gowriは、Elizabethが、Bhuvanに近づくのが、気が気ではない。たくさんのロティーを焼いては、差し入れに余念がない。クリケットチームにはまだまだ、メンバーが足りない。近くの村人もようやく、Bhuvanに協力してくれてメンバーに加わり始め、村外れのゴミ集めの不可触民の男、イギリスに恨みを持つ流れ者のシーク教徒などがチームに加わり、デコボコながらも、チームが出来あがっていく。

試合が近づいたある日、村では祭りのダンスがあった。ここで、クリシュナに扮して踊るBhuvan、ラーダーに扮して踊るGowri。輪の外でダンスを見つめるElizabeth。Elizabethも知らず知らずに、Bhuvanにひかれ始めていたのだ。兄のGoliathに、村人にクリケットを教えている事がばれてしまい窮地に立つElizabeth。自分の気持ちを英語で打ち明けるが、Bhuvanには届かない。

いよいよ、クリケットの試合。(試合経過は見てのお楽しみで、省略)

途中、仲間の裏切りや、怪我にもめげず、勝利を手にしていく1時間30分のクリケットゲームは手に汗握るものです。

勝利を手にしたその時、天は大きく割れて、恵みの雨が…。

「インドへの道」小林氏による解説
質問1:シーク教徒が途中でチームに参加しますけど、なぜ?

答え:村人がクリケット・マッチをイギリス人に挑む、という噂を聞いてやってきた、というところでしょうか。流れ者ですよね。グジャラートにスィクは居ないですから。デリーはスィクが多いので、あのピッチャー登場で場内のスィク教徒は立ち上がって絶叫してましたよ!そのシーンでも泣いてしまいました。

質問2:色々な階層のメンバーが、チームにいるようでうが、表面的にカーストまでいれて、描いているみたいですね。

答え:ヒンドゥー、スィク、ムスリム、不可蝕民、子供っていろいろ出てきてみんなヒーローになるんですよね。それぞれ見せ場があり、一人一人がかっこいい。インド全土でスーパーヒット間違いありません。あんなインド映画はじめてです。

質問3:ダンスシーンが、すごかったですね。月夜にダンスのアーミルのダンスが幻想的でした。村祭りのダンスもすごかったけど…。

答え:ちなみにこの曲は『ラーダー・カイセー・ナ・ジャレー』っていう歌ですが、ラーダーとはクリシュナ神の愛人です。インド神話ではクリシュナの妻はルクマーイー女神ということになっていますが、愛人ラーダーとの戯れ神話の方がインド人にとって有名です。この神話を元にした曲ですね。曲の意味は「ラーダーはいかにして嫉妬しないか?」といったような意味で、つまりガウリーがエリザベスの方に気のありそうなブヴァンの目を惹こうと死ぬ気で踊りまくる、というダンス構成になってます。アーミルが横笛を吹くポーズを取りますよね?

あれは「笛吹きのクリシュナ」という有名なクリシュナ神像のポーズでもあります。よくバラタなんかでもこのポーズは決めで出てきます。

何か武力ではイギリスに屈服したけど芸能文化では絶対にインドのほうがグレードは高いと私は思ってますので、この凄まじいばかりの舞踊を見て思わず泣きましたよ。「恐れ入ったか、イギリス!」という感じでしたね。何かすっかりインド人化してます。

質問4:相手役の女優さんGracy Singh、若くはないけど、すごい演技派ですよね。どんな人なんでしょうか?

答え:ちなみに彼女は今作品が映画デヴューだそうです。かつてTVドラマ「アマルナート」というのに出ていたようです。

質問5:英語でのイギリス人の会話には、字幕代わりに状況説明のアミダーヴのナレーションでしたね。

答え:アミターヴの渋い重低音ナレーションも良かったですね。当初タイトルにシュリー・アミターヴ・バッチャンとあったので特出か?と思ったんですが。変に有名俳優が混じらなくてよかったですよ。個人的な「泣け」度は、今まで見たインド映画中、一番です。

質問6:公開前から大評判で、すごかったですが…。

答え:アーミル・カーンはあらかじめPMヴァジパイと情報通信相のスシュマ・スワラージ(99年の総選挙でAP州でソニア・ガンディーの対抗馬となったBJPの切り札)の他、内務大臣L.K.アドヴァーニーに試写を見せています。

ボンベイのある現マハーラーシュトラ州政権はコングレスが牛耳ってますが、なぜ極右シヴ・セナが州政権を失ったかというとそれはアドヴァーニーとバール・タッカレーの確執が原因です。極右のシヴ・セナに唯一物申せる政治家は同じ極右のアドヴァーニーを置いて他にいません。というか、アドヴァーニーこそが現インドで最も強い力を持つ政治家です。

 アドヴァーニーは『ラガーン』を絶賛してます。これが意味することは、つまりアドヴァーニーを引き寄せることでボリウッド界に隠然たる発言権を持つ(泣く子も黙る)シヴ・セナを黙らせることが出来るということです。不可蝕民までもがヒーローに、などカースト至上主義者のシヴ・セナ検閲局のいかにも反対しそうなことですので。

アーミルは単なる役者馬鹿ではなく、この辺の計算も出来る才気溢れる凄い役者である、という事が出来ます。しかし願わくば政治家なんかにならないで欲しいですね。

2001年6月15日公開


          

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