直線上に配置
マサラ映画中毒
アイコン
 ボンベイにくる前、予習にと98年に日本で大ヒットした「ムトゥ・踊るマハラジャ」を見て以来、インドに行ったらインド映画を見ようとひそかに心に決めていました。この映画は、当時低迷している日本映画を尻目に約半年間単独上映観客動員数第1位をつづけた話題作です。なんとインドは年間900本以上の映画が作られている映画天国です。国の産業のベスト10に映画産業があるくらい人気があります。ボンベイには大きなフィルムシティがあり、ハリウッドならぬボリウッドと呼ばれているくらい映画製作が盛んで、市内のあちこちで映画のロケーション風景が見られます。特にインド門、ムンバイの上野駅、ビクトリア・ターミナル・ステーション、マリンドライブ沿いの海岸線がロケーションスポットです。ホテルのロビーやレストランでは、憧れのスターに以外に簡単に会えてしまいます。

ボンベイに来て、「インド映画が見たいのだけれども」というと、インド人の反応は極端にわかれます。

「およしなさい、時間とお金の無駄ですよ。何でハリウッド映画を見ないの、今年は、タイタニックも、007も上映されているし、恋に落ちたシェークスピアも良かったわ。どうしてもと言うなら、インドの巨匠・シェーカル・カプール監督のイギリス映画、エリザベス、そっちにしなさい。」

というのは、教養のある知識階層の人たちです。インドの黒沢明監督、サタジット・レイの、大地3部作「大地のうた」「大樹のうた」「大河のうた」(日本では、岩波ホールで上映された格調高いインド映画世界クラッシック名作撰集というビデオになっている。)は、日本でのおなじみのインドの誇る芸術映画ですけど、インド大衆映画はお勧めできないと言うことらしいです。いつもはどこでも一緒に行ってくれる英会話の先生のMrs.スワミも、このタイプで、「よしなさい、くだらないから。」といわれてしまいました。。

よしなさいと言われても、ムトゥはとっても面白かったし、大方のインド人たちは、ハリウッド映画よりインド映画が大すき。メイドのシャムラーさんは映画フリークで最近のヒット作は熟知しています。「ムトゥは面白いわよね、ボンベイで、どこに行ったらラジニカント(ムトゥを演じた男優)の映画が見られるかしら。」と聞いたら、「ムンバイではやってない、ラジニカントは、タミルムービーのスターだから。」と言われてしまいました。

 ボンベイで製作されている映画は、ヒンディー・ムービーとよばれるヒンディー語の映画です。ラジニカントは、タミル・ムービーのスターだったわけで、当然タミル語のわかる人が少ないムンバイでは上映されません。ラジニカントのファンは彼のポスターに毎日お線香をあげているくらいでまさに神様。ファンクラブは7万人、州知事に立候補したら、即当選間違いなしの人気です。ムンバイにもタミル人が多く居住しているマトゥンガの映画館では上映されるけど、シャムラーさんに「私だって怖くて行けないような映画館だからやめなさい。」といわれました。

 じゃあ、次に日本でヒットした、マニーシャ・コイララの「ボンベイ」は?と聞いたら、それならすでにビデオになっているはずだと言われ、私の住むフラットの下にあるレンタルビデオショップの会員になりました。日本でマイナーながらも上映された映画をたよりに、レンタルショップの目録から良さそうなのをシャムラーさんと探して、彼女にあらすじを聞いてからたてつづけに見まくりました。レンタル料金は1日30ルピー(90円)映画料金の1/3の価格で、電話すれば配達もしてくれます。レンタルショップにも、ヒンディー・ムービーとハリウッド・ムービーしかなくて、タミル、グジャラート、ケララ、ラジャスタン、ベンガル・ムービーは、ありませんでした。(後になって、たくさんあるテレビの、各国語チャンネルで各地の映画が見られることを知りました。) 

 では、インドの映画のどこが面白いか?といえば、とにかく娯楽性100%です。その昔、日本の映画、美空ひばりと江利チエミのミュージカルお姫様映画や、クレージーキャッツの映画(古くてごめんなさい。知らない人はお父さんお母さんに聞いてください。)の様にいきなり歌い出したり踊り出したりしてしまう、それもすごい人数で。インド映画は、ミュージカル?でもこれが当たり前。歌と踊りが入っていないのは特殊なくらいです。(ニューシネマという社会派映画も少しありますが。先のボンベイという映画は、娯楽よりもこちらの要素が強い) 歌と踊りが目玉と言って良いくらいなので、映画の封切り前に、サントラ盤のカセットテープやCDが売り出されます。歌は全てプレイバック・シンガーとよばれる人の吹き替えで、特に女優さんの歌の吹き替えは、インド版・安田祥子・由紀さおり姉妹のようなアーシャー・ボースレーとラタ―・マゲ―ジュカルの姉妹(共に70歳代)によって、吹きかえられていて10代のようなの美声は素晴らしくキンキン響きます。だからどの女優さんも同じ声で歌っています。

 踊りの方は、インドの古典舞踊を現代風にアレンジしたもので、フィルミー・ダンスと呼ばれています。かのマイケル・ジャクソンのダンスは、インドのフィルミーダンスからヒントを得ていてマイケルはインド人のダンスの先生から教えてもらったそうです。映画監督とは別に舞踊監督もいます。あの集団ダンスの場面は、8小節(たまに、16小節)ごとに振り付けされて、細切れに踊って撮影されていくそうで8カウントごとに場面が変わります。本当に見事な踊りでうっとりしてしまいます。映画のストーリーはだいたいお決まり。特にボンベイで撮影されるのは、純愛映画が主流です。一目で恋に落ちるヒーローとヒロイン、間を取り持つ、おどけ役の友人が出てきて、身分違いな恋をいさめる両親、突然、ヒーローか、ヒロインの親が、悪者にやられて怒りに燃えるヒーロー、涙に暮れるヒロイン、勇敢に立ち向かうヒーロー、捨て身の血だらけのアクション、意外な展開で難を逃れてめでたしめでたし。インド人の典型的な願望と人生観が盛りこまれています。

チャル・メレ・バイ
これを観てボリウッド映画にはまった

観客は上映中すごい反応ぶり。人気の映画は何度でも見に行くそうで歌が良くて、ダンスが良くて俳優が良い3拍子揃った映画は、いつも大入り満員。ビデオだけでは飽き足らなくなった私はついに大ヒット上映中の「Taal」を見に行きました。94年ミス・ワールド、スーパーモデル級のプロポーションのアイシュワリヤ・ライが主演です。田舎のヨガ教師アイシュワリヤとボンベイの観光開発会社のドラ息子との恋物語。
ボンベイにある映画館はリーガル、エロス、メトロなどイギリス風シネマの名前がついていて、だいたい1000〜2000人も収容できます。上映は、3時、6時、9時の
1日3回、上映時間は、約3時間で途中に休憩があります。


全席指定席で、数日前に予約し、窓口で、座席表を指差して、マークされていない席を指定すると、チケットにボールペンで座席ナンバーを書いてくれます。当日券もあります。ロードショーは、バルコニー席で100ルピー(約270円)、1階の席は、50ルピー。マチネのモーニング・ショー(11:30から)は、半額の50ルピーです。さて、人気の「Taal」は、2,000人収容のエロスが満席。タイトルが出ただけで、拍手喝さい、アイシュワリヤ・ライの名前がでたら、ピューピューと指笛です。もう始まる前から、多いに盛りあがっていました。言葉なんかわからなくても十分楽しめるムードです。

 Taal アイシュワリヤ・ライ主演

悪党をノックダウンしてはピューピュー指笛と大拍手。私は過去の映画でこれくらい乗り乗りの観客と一緒になった事がないので、とってもびっくりしてしまいました。ボンベイの友人は、なんと「Taal」にはまって5回も見に行き、今ではアイシュワリヤ・ライのダンス・シ―ンが踊れるそうで、こうなるとインド人に負けないくらいボリウッド映画狂と言えるでしょう。最近日本で上映されたアイシュワリヤ・ライの「ジーンズ・世界は2人のために」は、インド・アメリカ合作で、99年のアカデミー賞にもノミネートされた評判の映画です。ヒンディー・ムービーではありませんが、インド神話の女神のような美しい彼女が見たい方は、必見です。私は、インド版・トム・クルーズこと、シャールク・カーンの大ファンで、「Raju ban gaya gentlmen」(ラジュー出世する)や、「DDLJ」(花嫁はぼくの胸に)、母子ものの「カランとアンジジュ」を見て熱を上げていました。シャールク・カーンは、踊る大走査線の織田裕二のように熱血青年、素朴な好青年役が多く、ラストシーンでは、必ず血みどろの中ヒロインに抱き起こされるシーンがお決まりです。踊りも抜群です。シャールク・カーンは、日清のカップラーメンの宣伝をしているので、関連会社の商社の奥様が、この間パーティーで御一緒だったと聞いて、すごっくうらやましかったです。どうやら、日本でもお笑いタレント(ナンちゃん)が、インドで映画を作った様ですね。上映されたと聞きましたが、チェンナイ(マドラス)映画なので、これもボンベイでは見られません。日本で、インド映画ブームなんて聞くと、うれしくなってしまいますが、どうぞ、日本の皆さんも、スパイスがたっぷりきいた、究極のごった煮のボリウッド映画を是非ご覧ください。

                                        1999年12月記



好きがこうじて
フィルミーダンス教室へ通うYUKKE
(写真中央)

                                         
トップ アイコンもどる

直線上に配置








Ads by TOK2