ボリウッド映画鑑賞記
Vol.25

Zubidaa   ★★★★

監督:Shyam Benegal
脚本:Khalid Mohamed
出演:Zubeidaa モスリムの少女。 カリシュマ・カプール
     Maharaja Vijayendra Singh  マジーノ・バジパイ
     第一王妃Mandira  レーカ
     Zubeidaaの息子Reyaz  ラジット・カプール
     Zubeidaaの父、映画製作者Suleman Seth アムリシュ・プリ
     Zubeidaaの母、Surekha Sikri-Rege
     Rose、映画女優、ダンサー Lilette Dubey
     Maharajaの弟 Rahul Mahayar
     振りつけ師   シャクティ・クマール

鑑賞記

繊細にして華麗、演技の識別眼を持つ者には見る必要がある映画   
                                   By Taran Adarsh

 ニューシネマの映画監督:シャ−ム・ベネガルが、マサラ・ムービーきっての女優カリシュマ・カプールを起用しての繊細で、華麗な1950年代のインド王宮のマハラニを主人公に描いた時代劇ラブロマンス。時代考証も、完全になされた芸術性の高い、アートフィルム。音楽は、A.R.ラフマーン。映画全体のクライマックスに流れる、「So Gaye Hain」(眠っちゃった。歌:Lata Mangeshkar))の美しいメロディー、「Mehndi Hai Rachnewali」の伝統的な旋律が、素晴らしい。衣装デザインは、ピア・ベネガル。レトロなサリーや、当時のサルワール・カミ−ズ、英国スタイルの乗馬服、サリーの肩止めのアクセサリーや、王宮での宝飾品の素晴らしさも目をみはる。個人的には大好きなボリウッド映画のひとつ。
あらすじ

 真青な空にタイトル(ウルドゥとアルファベット表記)。朱色のドッパターが、ふわふわと落ちてくる。1952年。朱色のドッパターは、モスリム墓地の花でつつまれた墓にふわりと落ちる。
Reyaz(7歳くらい)は、ひっそり木陰で待つ祖母のもとに駆け寄り泣きじゃくる。Reyazは、母の死を理解できない年齢で、級友からも、母親のいない事でいじめられる。乳母に「あなたの母のZubeidaaは、美しくて…」と、話聞かされながら、眠りにつく。若き母Zubeidaaの幻が、子守唄を歌いにReyazの枕もとに現れる。(曲:Pyaara Sa Gaon)
1980年。青年に達したReyazは、謎に包まれた母親Zubeidaaについて、映画撮影所を訪ね、昔、母が1つだけ出演した映画のフィルムを探す。当時の記録は、殆ど、残っていないが、当時の振りつけ師を探し出し、Zubeidaaの話しを聞き始める。フィニシング・スクールに通っていた少女Zubeiddaは、父に隠れて、撮影所を訪れ、映画のダンスシーンを収録したのだった。美しいラジャスタンの衣装を身にまとい、快活にタンバリンを持って北インドのフォークダンスを踊った事がわかる。(曲:Main Albeli)しかしそのフィルムはどこにあるのだろうか。振りつけ師は「今時のフィルム・ダンスはエクササイズだよ。本当のダンスと言うのはZubeidaaのあのダンスの事をいうのさ…」
 ある夜、Zubeidaaの家では、父の友人が集まって、華やかなパーティーが行なわれていた。父の映画関係友人Roseが華やかにやってくる。ZubeidaaとダンスするRose。父は、人前でダンスするなんて、はしたないと、レコードを止める。(モスリムのとくに女性は人前でダンスはタブー)。そして、その席で、突然、父の独断で、Zubeidaaの婚約が、発表される。ショックを受けて、飛び出すZubeidaa。しかし、本人の意思とは別に、どんどん日取りが決まり、いよいよメンディーをする日がくる。メンディーの儀式で両手のひらを強く結んで、逃げるZubeidaa(曲:Mehedi HaiRachwalli…この曲では踊らないです。)失意のもとに結婚式を終え、すぐに妊娠。出産当日、父と義父は、両者の利害関係から対立し、独立直後ので、夫はインド国内では仕事がないから、パキスタンに行くといい、Zubeidaaの同行を認めない実父と義父によってこの結婚が解消される事になった。「talat・talat・talat」(離婚・離婚・離婚と三回、モスリムの僧侶の前で唱えれば結婚の解消が出来る)と、唱える夫。生まれたばかりの子を抱いて、号泣し、茫然自若とした日々を送る、Zubeidaa。
 Reyazは、当時、Zubeidaaと親交があったRoseの事を祖母から聞き出し、すっかり老婆となったRoseのもとを訪ねる。Roseが、Zubeidaaについて語り出す…。
 Roseは、離婚されて、引きこもっているZubeidaaをポロ見学に誘い出す。競技場で一目で、Zubeidaaを見初めたMaharaja Vijayendra Singhは、つぎのパーティーにZubeidaaを招待する。パティーの夜、ダーク・グリーンのサリーの、Zubeidaaに高価なネックレスが送られ、華やかな宴ではタキシード姿のマハラジャとZubeidaaがダンスをする。そこで、マハラジャから、プロポーズされる。あまりの突然の事に、我を忘れて、マハラジャの腕からすりぬけて、席へ戻るが、呼吸が乱れている。Zubeidaaの家にはMaharajaから、たくさんの花が次々と届けられる。そして、Maharajaからは、熱い思いもこもった手紙が。母の知るところとなり、モスリムの娘と、ヒンディーのマハラジャの結婚が上手くいくはずがないといわれる。母娘は、そろってマハラジャに会いに行き、結婚について話し始める。そこで、母は、嫁ぐなら息子は私のもとに置きなさいという。息子までヒンディーに改宗しなくてはならなくなる。かれはモスリムの子として私が育てましょう。体一つで、家をでるZubeidaa。息子はまだ、母との別れさえも理解できないほど小さい。テラスから、静かに何も言わずに娘を見送る父。
 Reyazは、祖母の寝室からZubeidaaの日記を見つける。そして、母が嫁いだ城を訪ねようと決心する。今は、すでに観光用のホテルに改築されているが、当時のマハラジャの写真や、調度はそのままだ。ホテルの支配人は、以前のマハラジャの執事だった人で、城を案内してくれる。壁にかかった写真を食い入る様に見て、母の写真を探すReyaz。
日記の回想から…マハラジャの寵愛を一心に受けて、幸せいっぱいのハネムーン(曲:Dheeme Dheeme …たっぷり踊ってくれます)にでかける。Maharaja操縦のセスナ機に乗り、はしゃぐZubeida。「ビクター(マハラジャの愛称)私を愛してね。そうしないと、こうよ。」と操縦桿を横から握り、いたずらするZubeidaa。風光明媚なMaharjaの領地を乗馬する二人。ハネムーンから帰り、王宮にはいり、翌日、第一王女のMandiraを引き合せるマハラジャ。城のしきたりや、決まりはみんな彼女に聞く様にといわれる。Mandira-jiというと「Mandyとよんでね」といわれる。様々なしきたりに一つづつ驚くZubeidaa。(腕が出るような服はいけませんとか、人前でマハラジャをヴィクターなんて呼ばないようになど…)Reyazは、ホテルの支配人に頼んで、まだ、城に住んでいるMandiraに会いに行く。そこには、歳を重ねても気品に満ちた、美しい王妃がいた。Reyazのあごに手を添えて、顔を眺めながら、「この笑顔を知っているわ…」と優しくつぶやくMandira。Reyazの写真を眺めながら、涙するZubeidaaの後ろからMaharajaが入ってくる。豪華なネックレスを見せ、「どう?」「わぁー私に?」「いいや、Mandiraの誕生日のお祝さ、さあ一緒にパーティーに行ってくれるね。」バースディーケーキを切り分け、お互いに口にいれあうMaharajaとMandira、それをジット脇で見ながら嫉妬するZubeidaaは大きなケーキの一切れをMaharajaの口へ押しこむ。ごきげん斜めのZubeidaaを彼女の離れ(マハラジャの夏の宮殿)に送ってきたMaharajaに「私には何もないのね」「いいや、君にもスペシャルプレゼントが用意したあるよ。」…そこには、愛しい我息子が母と待っていた。抱き上げて涙にするZubeidaa。
サリー姿のMandiraと、スポーティーな白のスーポーツウエア−のZubeidaaが、バトミントンをしている。「Mandyおねえ様、どうして、Maharajaは御不在ばかりなの?退屈」「インド独立後の最初の選挙があるのよ。Maharajaはその事でお忙しいのよ。わかって差し上げなければ…」とさとす、Mandira。退屈な王宮での暮らし。踊り子たちが美しいラジャスタンの衣装で踊るのをMandiraと一緒に見るZubeidaa。次第に踊りたくなる快活な性分がむくむくと芽生え、しきたりに反して、踊り子たちの輪に入るZubeidaa。当惑しながら、見守るMandira。ラジャスタンのマハラジャたちが一同に会し、独立後最初の選挙への出馬をめぐって相談をする。(このとき、マハラニたちは、御簾の奥にかしこまっている)。このときの古典の歌がすばらしい。
「退屈している様だね。相手になろうか?」と、しばしば離れを尋ねてくるMaharajaの弟。Zubeidaaは、彼を追い払うのに苦心する。Mharajaに今後Zubeidaaに近づくなと言い渡される。
 選挙戦が、いよいよ始るが、Maharajaが、遊説先に連れ歩くのは専ら、Mandiraばかり。マハラジャの衣服などの身の回りのお世話も、専ら第一王妃の仕事だ。嫉妬と自分の立場しか、考えられないZubeidaa。ついにマハラジャに食ってかかる。「どうして、どうして、私を連れて行っては下さらないの?」朝食のテーブルをひっくり返し、かんしゃくを起こすZubeidaa。Ryazは、ホテルのバーで、母を辱めようとした、Maharajaの弟と出会う。今では人に酒をおごらせても平気な、おたかり貴族になっている。ホテルの支配人が、包みを届けてくれた。そこには、王家の紋章の入った便箋に「美しいおもいで…M」と書かれたメモが。Mは、母Zubeidaaが改名してマハラジャからいただいた名前Minakshiの頭文字だった。そして母の残りの日記と古い缶に入ったフィルム。Zubeidaaはついに我慢できずに、グライダーで、遊説先に出かけようとするMaharajaとMandiraのいる飛行場へいき、Mandiraを強引にMaharajの腕から引き離し、飛行機に乗りこむ。飛び立った直後、火を吹いてまっさかさまに、落ちるグライダー。飛行機からは、朱色のドッパターが、舞いながら落ちてくる。
Reyazは祖母と映写室にいる。後ろの席には、あの、年老いた振りつけ師が…。フィルムが回り出す…と、そこには、白黒フィルムに亡き母Zubeidaaが、華やかに踊るシーンが繰り広げられる。振りつけ師が感慨深く見入り「これが本当のダンスさ…」と。
私のかってな見所と感想。

 観終わって、きれいだわとつくづく思いました。もっとインドの宮廷絵巻を見たかったけど、今のインドでは、あまり、こういう階級意識が強いのは、嫌煙されるんでしょうか。誇張されすぎるのを嫌う様ですね。主人公のZubeidaaは、ちょっと「風とともに去りぬ」の、スカーレットが入っているかなと。翻弄される人生ながらも、マハラジャの愛をどうしても独り占めしたい。一方、Mandiraの方は、実に控えめで、愛されるよりも愛する人。マハラジャの愛するZubeidaaならば、私も彼女を愛しましょう…という聡明さと謙虚さのあふれた王妃。この感じがレーカにぴったりでした。晩年の王妃が実年齢でしょうが、若いときのレーカも惚れ惚れするほどの美しさでした。
 カリシュマ・カプール(愛称ロロ)のほうは、親の決めた結婚を嫌がってメンディーをしないと駄々をこねたり、離婚をいいわたれれた時の失意に満ちた感じ、マハラジャにプロポーズされて、びっくりして戸惑うところなんかは、もう、すっごい演技でした。もちろん最後のブライダーに乗りこむ時レーカを押しのけるあたりも。無邪気さがそうさせるみたいな。映画の前半は映画館の観客さえもピーンと緊張しているというか。息をのんでみんな観てましたね。後半は、どうしてもManderaに嫉妬して、大人になれない無邪気さが残る王妃を、好演。(レーカがもっといびるかと思ったら、全然いびらないのですよ。)みんながこの無邪気さを好きになって虜になるのに、自分で感情を押さえきれない。…このあたりが、とっても、スカーレットみたい。
 監督ははっきりいってませんが、ファティプールのマハラニの実話であろうというのが、大方のインド人の感想です。時代考証も衣装考証もしっかりしていて、日本での公開の話もあるようです。撮影はジャイプール城や、The Rambagh Palace(ジャイプールのもと王宮ホテルタージ系)で行なわれていて、宝石はジャイプール城のコレクションから借りているそうです。お母さん役の女優さんもすっごくよかったです。あのダンス振りつけ師のいつもコメディ俳優シャクティー・カプールもアル中役よかったですね。2時間30分で短めで、「あら、あっけなく死んじゃったじゃないの。」という感じでした。マサラムービーじゃありませんから…。
 で、サリーと宝石はすごいです。娘時代に着るロロのサルワーズ・カミューズもピンクのギンガムに白のレース、チョウチン袖とか、女学生の制服におさげがみ。それが、一気に金のボーダーのフォーマル・サリーに巻き毛髪。エメラルドとかが、ロロの目によく合ってました。当時はみんなサリーの振りの肩止めにブローチつけていたみたいですね。すごくすてきでした。

          

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