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9月25日(木) 「賞状」

「ママ、見て見て!」
夜、私が帰宅するや否や、息子が満面の笑みをたたえてあるものを見せに来た。
小さな楯と賞状である。
息子は今年の4月から、本人の希望で珠算教室に通っている。
楯と賞状は、その珠算教室で3ヶ月にわたって行われたベストテンという名前のコンテストで、息子の総合得点が教場内で第1位だったことに対するものであった。
今回のベストテンで、新参者の息子が諸先輩方をさしおいて優勝に輝いたことは教場だよりで知ってはいたが、このような楯や賞状などをいただけるとは考えてもいなかった。
親の私はもとより、息子は今、天にも昇るような思いだろう。

息子は、小さい頃から体育系が苦手だ。
そのため運動会、マラソン大会、水泳授業などの舞台では、常に地味な存在であった。
さらに絵画製作はもっと苦手ときている。
したがって、彼はこれまでの8年の人生において、何かで「1位」になったり「賞状」をもらったり「優勝者」として発表された経験など一度もなかったのだ。
息子の得意はただひとつ。算数だけである。
その算数好きが高じて飛び込んだ珠算の世界で、初めて彼は、はっきりと目に見える形で「人に勝つ」ことを経験することができたといえる。
それはそれは嬉しいに違いない。
スポーツが得意で、絵画などの才能をもったお子さんたちならばあまり珍しくもないであろう「賞状」というモノ。
我が息子にとっては、初めての宝物である。

こんないいことがあったんだ・・・。
そろばんなんて習ってもあまり意味がなさそうだし、と初めは習わせることに気乗りしていなかった私も、今回のことで珠算教室に通うということの意味を再確認した。
ここは、息子が大いに活躍できるステージなのかもしれない。
何にせよ、そろばんを習うことで息子が自分に自信をもてる機会が得られるのであれば、それでいいではないか。
この半年間で6回の検定試験に合格してきた息子の頑張りを、誉めてやらなければ。
どんな人間にもひとつくらい得意なものがあるものなのだな・・・・と、素朴な事実に感心している。








9月23日(火) 「持ち物」

息子が学校から遠足のお知らせをもらってきた。
持ち物の項目を見て、一瞬目を疑う。
弁当、水筒、敷物、おしぼり、タオルなど定番の持ち物に混じって「靴」とある。
靴?
履いて行けばいいんでしょ?
初めはそう思ったが、息子に話を聞くと、どうもそういうことではなさそうだ。
履いて行く靴の他に、もう一足持参すべしという意味なのである。
遠足に靴を持って行くなんて聞いたことがない。
よく見れば、その他に「着替え一式」という項目もある。
パンツと肌着、靴下まで持って来いとのこと。
まるで一泊旅行だ。
たかが近県の公園に遠足に行くのに、着替え一式と靴まで持って行くだなんて、昨今の小学校の遠足はどうなっているのだろう?

目的地の公園にはアスレチックがある。
きっと、池などもあるのだろう。
過去にこの公園に遠足に行き、池の中だか水溜りだかに落ちて、全身ずぶ濡れになった児童がいたのかもしれない。
どの子がそんなおマヌケな事態に陥ってもいいように、全員に着替え一式と靴を持参させる。
転ばぬ先の杖としては、完璧だ。

お弁当と靴を同じリュックに入れることに抵抗を感じた私は、きょう息子に新しい靴を買ってやった。
そして、子どものリュックサックに持ち物一式を詰めてみたが、8歳の子どもの小さなリュックはやはり満杯状態。
この上にお弁当箱と200円分以内のお菓子が入り切るとはとうてい思えない。
[じゃ、ボストンバックで行く?」
半分本気で言いたくなってしまう。
来年の持ち物欄に「枕」や「洗面道具一式」なんて項目が増えていなければいいのだけれど。





9月19日(金) 「パン」

あのパン、どこ行っちゃったんだろう?
昨日の朝、突然あのパンのことを思い出した。
数日前、仕事の帰りに職場近くのパン屋に寄ってパンを買った。
その店のデニッシュはとても美味しく、私のお気に入りだ。
レジでパンを載せたトレーを出すと、レジの女性が、
「これ、サービスです」
と言って、ビニール袋にくるまれたパンをひとつトレーに載せてくれた。
この店は夕方遅くに買いに行くと、たまにこういう1品サービスがある。
おまけというのは、いくつになっても嬉しいものだ。

翌朝、朝食に、その店で買ったデニッシュを食べた。
息子も私が買ってきたカレーパンを食べた。
その時点では忘れていたのだ。あのサービスのパンの存在を。
昨日の朝になって、突然に「あのパン」のことを思い出した。
そういえば、あのパンどこ行っちゃったんだろう?
キッチンやダイニングテーブルなど、思いつくかぎりのところを探したが、パンの行方は杳として知れない。
ただでもらった物とはいえ、ないとなると気になるものだ。
念のため夫にも聞いてみたが、朝食を食べない夫がパンのことなど知るわけはなかった。
息子も知らないと言う。もともと私が出した物以外は食べない子なのだ。
となると、あのサービスパンはどこに行ったのか?
第一あのパンは何パンだったのだろう?
クリーム系だったのか、デニッシュ系だったのか、はたまた調理系だったのか。
せめてそれだけでも知りたかった・・・・。

疲れている。
ここのところ、仕事が超ハードなのだ。
眠っていても仕事のことが頭から離れないし、帰宅して家事やっている時もずっと仕事のことを考え続けている。
頭も身体もくたくたに疲れまくった主婦が牛耳る家の中は、今、混乱の極みである。
パンがどこに行ったかわからなくなるくらいに。
私が知らず知らずのうちに食べちゃったとか?
あるいは間違って捨てちゃったのか?
間違えて冷蔵庫にでも入れてしまったとか?
考えても考えてもわからない。

それにしても。
もう何日も掃除機をかけていないことや洗濯物がかごに溢れていることなんかより、サービスでもらったパンの行方に拘ってしまうあたり、やはり私はどうかしているのかもしれない。
さきほど鏡で自分の顔を見たら、心なしか目が据わっているように思えた。

結局、パンの行方は迷宮入りである。
今頃、家の中のどこかで化けているかも・・・・。








9月14日(日) 「息子のケータイ」

息子のケータイを機種変更してきた。
彼は小学一年生の時から、H"のいわゆる「安心だフォン」を使っている。
2年近く使っているせいかここのところ不調を感じることが多くなったため、機種変に踏み切ることにした。
「安心だフォン」とは、あらかじめ登録された3ヶ所にしか発信できないという制限付きのPHSだ。
息子はこの制限付きがいたく不便だったらしく、かねてから、
「ぼくのケータイ、不安だったらいいのに」
としきりにぼやいていた。
彼は自分のケータイ「安心」に対して、普通のケータイを「不安」と呼ぶ。

他社の携帯と違い、H"は販売されている機種と台数が限られており、端末の価格が高い。
軒並み1万円近いのだ。
秋葉原の電気店を回りながら、ちょっとため息が出てしまった。
安い機種でも6000円くらいする。
最近出たカメラ付きなど、15000円。
使うのは8歳の子どもなのだ。高い端末を持たせるのは、ある意味危険でさえある。
今度はカメラ付きがいいな、と夢を見ていた息子も、店頭でプライスを見て驚いたらしく、二度とカメラ付きとは言わなくなってしまった。
ドコモの新規だったら、カメラ付きでも2800円くらいからあるというのに。
時代は変わったものだと思う。
昔はPHSなんかタダで配られていたものだが、今や携帯の方が安く手に入るのだ。
価格に目がくらみ、ドコモかauあたりの携帯にしちゃおうかな、と一瞬迷ったが、H"のライトメールという機能に未練が残る。
他社の携帯には決してない機能である。
やはり、H"でなくちゃだめ。
何軒かの価格を地道に調査するうちに、裏通りの店に安価で機種変できる古い機種がまだ残っていることを知った。
よかった・・・・(-.-;)
型落ちとはいえもちろん二つ折だし、カメラこそ付いていないが、他の機能は何ら遜色ない。
機種変更を終えた後、さっそく息子と二人でファーストフード店に入り、オンラインサインアップなどの手続きや各種設定をしてやった。
息子は大感激である。
着信音も壁紙もダウンロードできる!
E-mail も送れる!
写真が見られる!
確かに、さっきまで彼が使っていた写真も表示できない機種から比べたら、雲泥の差だ。
息子の好きなクルマの壁紙とアニメソングの着信音をダウンロードしてやると、彼は大喜びしていた。

素朴でいいな・・・と、そんな息子の姿を見て微笑ましく思う。
自分も初めてケータイを持った時は、こんな感動をおぼえたはずだった。
初めからカメラ付きの機種を使っている高校生や中学生たちにはわからない感動なんだろうな。

帰宅後、息子と二人で一晩かけて新しいケータイをいじくりまわして遊んだ。
嫌味ではなく、素直に、
「新しいケータイって、いいねっ(^^)古くても」
と、息子はしきりに言っている。






9月13日(土) 「永久歯」

きょうまた、息子は歯科医院で乳歯を1本抜いてもらった。
もう何本目かわからない。
乳歯というものは、永久歯に生え変わるために自然に抜け落ちるのが普通だが、息子の歯は何故か自然に抜けてくれないのだ。
それでも永久歯は当然ながら時期が来れば待ったなしで生え始め、下から乳歯を押し上げながら勝手な場所に頭を出してしまう。
それをそのまま放置しておくと歯並びに悪影響が出てしまうので、そのつど歯科医院で邪魔になった乳歯を抜いてもらわなければならない。
体質でしょう、と歯科医は言った。
乳歯が自然に抜け落ちにくい体質というのがあるらしい。
息子はもう慣れたもので、麻酔注射も抜歯もまったく怖がらない。
乳歯は永久歯と違い、歯科医の手にかかればあっさり簡単に抜けてしまう。
麻酔などかけなくてもいいのでは、とさえ思ってしまうほど、いとも簡単にである。
今回はこれまでの前歯と違い初の奥歯だったのだが、同じことだ。

止血のための綿を取り外したあと、息子の口の中を見てみた。
先ほどまで歯茎の横から頭を出していた永久歯が、抜歯した乳歯の座に納まろうと僅かに位置をずらしたのがわかる。
なるほど・・
人間の身体はすごい。

夜になってから今一度息子の口の中を覗いてみて、驚愕した。
くだんの永久歯は、今やすっかり定位置に納まりかえっているのだ。
もう何日も前からそこに生えていますよ、とばかりにである。
今朝までそこには確かに別の歯が生えていたはずなのに・・。
乳歯が席を譲り渡したとたんに、勝手に引越しをしてくる永久歯の図太さに恐れ入った。
まるで、本妻が家出をしたとたんに我が物顔で自宅に上がりこんでくる愛人のようではないか。
人間の身体とは、実にうまくできているものだ。







9月9日(月) 「妻たち」

先日、仕事先で偶然に学生時代からの友達に会った。
時間がなかったので立ち話しかできなかったが、短い時間にいろいろな話をし、久々の再会は大いに盛り上がった。
学生時代の友達は、いい。
話しているうちに、18、19の頃にあっというまに戻ることができる。

別れ際に、今度はゆっくり逢おうよ、ということになった。
同じ仲良しグループだった別の友達も誘って。
それじゃ、いっそ旅行に行こう!子連れで。
お互いに子どもたちも同い年だし、ちょうどいい。
話はすぐに決まった。
私たちは、それぞれに仕事をもっている。
自由になるお金がある妻たちは、夫に相談もせずに旅行の計画を立てる。
しかも子どもを連れての旅行だ。
その日以来、仲良し3人でメールをやりとりし合い、旅行の計画は着々と進行している。
それどころか、秋の旅行の次にはスキーにも行こう!などと、もうその先の計画まで立ち上がり始めている。
言うまでもなく、どの計画でも夫たちは留守番だ。
自由になるお金がある人妻は、時間や人生さえも自由にすることができるらしい。
自分もその中の一人でありながら、冷静に考えると、ちょっと不思議な気分になってくる。






9月6日(土) 「ビッグサンダー・マウンテン」

アナハイムのディズニーランドで事故があった。
ビッグサンダーマウンテンが走行中に脱線したのだという。
死者が出る大惨事であったことをニュースで知り、ディズニーリゾートの大ファンの私としては、少なからずショックを受けた。
私は過去に2度アナハイムのディズニーランドを訪れているが、今回事故を起こしたビッグサンダーマウンテンには乗ったことがない。
初めて行った時は、カリフォルニアでは珍しい雨天に当たって運転中止だったし、2度目に行った時は混んでいて乗れなかったのだ。
「あれは危ないと思っていたんだ」
アメリカには2度とも一緒に行っている夫が、テレビのニュースを見ながら、したり顔で言った。
「東京ディズニーランドのビッグサンダーで、ぼくはおでこをぶつけた。あれは危ないアトラクションなんだ。」
おでこぶつけたの?
ぼんやりと私が聞くと、夫は呆れたように、
「忘れたの?隣に乗っていたじゃない。しばらくの間それをネタにして笑っていたじゃない」
と言う。
そうだったっけ?
言われてみれば、確かにそんなこともあったような気もするが。
第一、子どもが生まれる前に夫と二人でディズニーランドへ行ったことがあること自体、忘れていた。
ディズニーランドには、これまでにいろいろな人と出かけた。
一緒に行った人の数を数えたら、40人は超えるかもしれない。
夫も、その中のひとりなのだ。
ビッグサンダーでおでこをぶつけたくらいのアクシデントなど、私はもはやおぼえてはいない。
そんな昔の出来事を忘れた私に呆れる夫より前に、
死者が出るほどの事故と、車体が揺れた拍子におでこをぶつけた自分のドジを結びつけて、
「あれは危険なアトラクションだ」と決めつける夫に、私は呆れる。






9月3日(水) 「スイミング」

小学3年生の息子が、学校のプール検定で25メートルを泳ぎ切り、4級に合格してきた。
この奇蹟に、我が家はちょっとした騒ぎになった。

この夏前まで、息子はまったくのカナヅチだった。
昨年の夏、7メートルをやっと泳いで6級に合格したものの、それ以上泳げるようになる見込みはまったくなかった。
私は水泳が苦手で、息子に泳ぎを教えることなどできない。
夫も泳ぎはそう得意な方ではない。
もともと体育系は苦手な息子。
保育園の頃からプール遊びには劣等感をもっていた息子。
この夏も6級のまま終わるのだろうか。
クラスメートが次々に5級4級の検定に受かっていく中で、このまま取り残されていくのか・・
そんな不安にかられていた夏休み前のある日。
息子が学校の帰りに、1枚のチラシをもらってきた。
スイミングスクールの夏休み短期講習のチラシだった。
これだ!
気乗りしない息子をあの手この手で説得し、とうとう4日間の短期講習に通うことを承諾させた。
1日1時間の講習を4日間受けたところで、急に泳げるようになるとは思えない。
しかし、息子はもう3年生。
溺れる者は藁をもつかむ、とはこのことかもしれない。
水に対する抵抗感だけでもなくなってくれれば、それでいい。
最初はその程度しか期待していなかった。

短期講習は、あっというまに終わってしまった。
仕事がある私は息子のスイミングについて行ったことがないので、毎日どんな練習をしたのか、どれほどの上達をしたのかまったくわからない。
しかし、スイミングから帰ってきた息子から、きょうはクロールの練習をした、きょうは背泳ぎを習った、などと聞くと、それなりに成果は上がっているように思える。
学校の次の検定は夏休みの終わり。
12.5メートル泳ぐことができれば5級だ。
受かるとはとうてい思えないが、本人は「受かりそうな気がする」などと言って夢を見ている。
よしよし。わずかながらでも自信とやる気をもってくれればいい。
そんなこんなで迎えた、夏休み終わりの検定日。
息子は、あっけなく5級に合格してきた。

さすがである。
息子がではなく、スイミングが。
ただお金を取らないよね・・・と、実家の親や夫はしきりに感心していた。
教える人が教えれば、あんなカナヅチ君が12.5メートルを泳げるようになってしまうのだ。
すごいすごい、とみんなが褒めちぎる中、昨日、この夏最後の検定が実施された。
その検定で息子はなんと、25メートルを泳いでしまったのだ。
奇蹟が起きたとしか言いようがない。
彼は、息継ぎができない。
それはまだ習っていないのだ。
本人は、一度も息継ぎをせずに泳いだのだと主張している。
息継ぎをしないまま8歳の子どもが25メートルを泳ぎ切ることができるものだろうか?
とにもかくにも、25メートルを泳げば4級は合格だ。
息継ぎができようができまいが、4級は4級。
息子の水泳帽には4とはっきり書かれた緑色のシールが貼り付けられている。
緑色は、上級者を表わす色らしい。
カナヅチだったあの子が4級?
人生とは、何が起きるかわからないものだ。

ここ数日、息子の話はプールのことばかり。
水の中で遊ぶことの楽しさを、やっと知ったのだから無理もない。
今月から、息子はスイミングの定期コースに正式に入会した。
どれほど上達するものかわからないが、とりあえず彼は今、水泳に燃えている。
まったく人生はわからない。
あっぱれスイミング。
彼に新しい世界を与えてくれたスイミングスクールに、ただただ感心するばかりだ。



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